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STORY / ID 3437

ヒストリー

J Dillaと『Donuts』

J Dillaが2006年2月7日、32歳の誕生日にStones Throw Recordsからリリースしたアルバム『Donuts』は、そのわずか3日後の2006年2月10日に彼が死去したことでも知られる、全31トラック・43分24秒のインストゥルメンタル作品である。制作背景をめぐっては複数の証言があり、批評面でも高い評価を得てきた。

J Dillaが2006年2月7日、Stones Throw Recordsからリリースしたアルバム『Donuts』は、彼の32歳の誕生日に発表された作品である。J Dillaはそのわずか3日後、2006年2月10日に死去した。

J Dillaは2005年、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)およびループスの診断を受け、同年の大半をロサンゼルスのシダーズ・サイナイ医療センターに入院して過ごした。本作の制作時期・制作過程については複数の証言が存在し、食い違いが見られる。一般に広まっている説では、J Dillaは入院中にポータブルターンテーブルとBoss SP-303サンプラーを使って本作の多くを制作したとされる。一方、Stones Throwのゼネラルマネージャーだったエゴン(Egon)の証言では、アルバムの「ほぼすべて」は入院前に制作されており、入院中も制作を続けていたとされる。さらに、ジャーナリストのダン・チャルナスによる2022年の報告では、本作は自宅で作られたデモテープとして始まり、後にStones Throwのアートディレクターだったジェフ・ジャンクがPro Toolsを使って完成させた、とされている。これらの証言のいずれかを確定した事実として扱うことはできない。制作中、J Dillaの手は腫れて痛みを伴ったため、母親が手をマッサージして制作を助けたという証言もある。

アルバムは全31トラックのインストゥルメンタル楽曲で構成され、総時間は43分24秒。ロック・ジャズ・ソウルなど34種類の異なるサンプルが使用されている。構成上の特徴として、最後のトラックが最初のトラックへとループするように作られている。ボーカルとして使われているのは、様々なレコードから取られた短いフレーズや息遣いのみで、まとまった歌詞は無い。多くのトラックは1分から1分半程度の長さで、唐突に始まり唐突に終わる構成になっている。

批評面では、Metacriticスコアは84で「universal acclaim」とされる。Pitchforkは2006年の初出時に10点満点中7.9点を付けたが、2012年に10.0点へ改訂した。同誌の「2006年のベストアルバム50」では38位、「2000年代のベストアルバム200」では66位にランクインしている。Rolling Stoneは2020年改訂版の「歴代最高のアルバム500」で386位にランクした。

こうした評価の積み重ねを背景に、本作はループ主体のインストゥルメンタル・ヒップホップ制作に大きな影響を与えたと広く評価されている。Drake、Nas、Jay Electronica、MF DOOM、Ghostface Killahなど複数のアーティストが本作のインストゥルメンタルの上でラップしたことが知られている。